日本を代表する素晴らしい俳優、仲代達也(なかだい たつや)さんが亡くなったというニュースに、多くの人がショックを受けています。
「一つの時代が終わった」と感じている人も多いかもしれません。
仲代達也さんといえば、なんといっても「鋭い目」が印象に残ります。
スクリーンに映る、あの力強く、すべてを見通すような目つきは一度見たら忘れられません。
なぜ、仲代達也さんの目は、あんなにも人の心をつかんだのでしょうか?
この記事では、世界の映画監督・黒澤明さんも夢中にさせた仲代達也さんの「鋭い目」の秘密と、誰にもマネできない「すごいオーラ」が生まれた理由を紹介していきます。
仲代達也さんのトレードマークである「鋭い目」。
そのパワーは、若い頃の厳しいトレーニングと、天才・黒澤監督との出会いによって磨かれました。
その原点を探ってみましょう。
若い頃、俳優を目指していた仲代達也さんは、驚くことにセリフのある役がもらえませんでした。
舞台のすみっこに、ただ立っているだけの毎日だったそうです。
仲代達也さんは、その時間をムダにしませんでした。
「セリフがないなら、どうすればお客さんに気持ちを伝えられる?」
仲代達也さんは、目線や顔の表情だけで感情を伝える技術を、徹底的に練習します。
上記のような地道なトレーニングが、あの伝説的な「鋭い目」の基本になりました。
「世界のクロサワ」と呼ばれる黒澤明監督は、仲代達也さんの才能に気づき、特にその「目」をほめました。
黒澤監督は、仲代達也さんの「光をよく集める、少し出ている目」こそが、最高の武器だと見抜いていたそうです。
映画『用心棒』などの撮影では、「セリフに頼るな。目ですべてを語れ」と厳しくアドバイスしたと言われています。
「君のその目が、映画の画面をピシッと引き締めるんだ」
黒澤監督にこう言われたことは、仲代達也さんにとって大きな自信になりました。
もし黒澤監督と出会っていなければ、あの「鋭い目」は生まれなかったかもしれません。
仲代達也さんの目つきには、ただ鋭いだけでなく、深くてどこか悲しそうな雰囲気があります。
それは、演技のテクニックだけで作られたものではありません。
仲代達也さんは、戦争で家族を亡くしたり、食べるものに困ったりするなど、大変な時代を生き抜いてきました。
その想像もできないような人生経験が、仲代達也さんの目に「深み」を与えていたのでしょう。
セリフがなくて、ただ黙って立っているだけでも、見ている人の心を揺さぶる仲代達也さんの鋭い目は、彼の「人生を映す鏡」でもあったのではないでしょうか。
仲代達也さんの「鋭い目」は、特に黒澤明監督の映画で、そのすごさを世界に示しました。
『影武者』や『乱』など、仲代達也さんの「目」が物語を動かした、有名なシーンを見てみましょう。
仲代達也さんの「目の演技」がピークに達したと言われるのが、この2つの黒澤映画と考えます。
仲代達也さんの演技のすごさは、大声を出したり、泣きわめいたりするだけではなく、その反対です。
『人間の條件』という映画での苦しみや『切腹』という映画での覚悟など、どの作品でも心の中にあるエネルギーを、すべて「目」に集中させていました。
静かに立っているだけで、その鋭い視線が、その人が経験してきたすべてを語っています。
これこそが、仲代達也さんの演技の一番すごいところだったと考えます。
仲代達也さんの特別な雰囲気は、一緒に演技をする俳優たちも圧倒しました。
昭和の大スター、三船敏郎(みふね としろう)は「仲代達也さんが撮影場所にいるだけで、空気がピリッと変わる」と話しています。
仲代達也さんのもとで学んだ俳優の役所広司さんなど、多くの俳優が「仲代達也さんには、目で演技を教えてもらった」と、リスペクトを口にしています。
仲代達也さんは、あれこれ言わなくても、その姿と「目」で、後輩たちに「役者としてどう生きるか」を示していたのでしょう。
92歳で亡くなるまで、仲代達也さんが多くの人から愛され、尊敬されたのはなぜでしょうか。
仲代達也さんは、ずば抜けた演技力だけでなく、彼の人としての魅力にありました。
仲代達也さんは「役者は死ぬまで現役」の言葉をまさに実行した人でした。
仲代達也さんの生き方そのものが、多くの若い俳優たちの「あこがれのお手本」となっていきます。
仲代達也さんの人柄と、師匠である黒澤監督との深いつながりがわかる、感動的なエピソードがあります。
黒澤監督が亡くなる直前の誕生日に、仲代達也さんはお祝いにかけつけました。
その時、病気の黒澤監督は、ベッドの上から仲代達也さんの顔を見て、こう言ったそうです。
「なあ仲代君、もう一度、でっかい(すごい映画)を一緒にやりたいな」
この夢は実現しませんでしたが、二人の天才が心でつながっていたことがわかるこの話は、今も多くのファンの胸を熱くします。
仲代達也さんのプロフィールをwiki風にまとめました。
仲代達也の訃報に関してSNSの反応を見てみました。
仲代達也さんが遺した「鋭い目」。
その秘密は、まさに仲代達也さんの「役者魂(やくしゃだましい)」そのものです。
上記の背景を知ることで、仲代達也さんの映画は、もっと深く私たちの心に響くはずです。
あなたの心に残っている仲代達也さんの名場面や、好きな映画があれば、ぜひ家族や友達と話してみてください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。